脳は頑丈な頭蓋骨に守られていることくらいみなさんご存知でしょう。そんな脳が傷つくと聞くと、かなり強い力が外部から働いたことが原因と考えるのが普通だと思います。しかし、子どもの脳はあなたのその言動によって簡単に傷ついてしまう可能性があります。
具体的に、子どもの脳を傷つける大人の関わりとは、
- 身体的虐待
- 性的虐待
と、ここまでは想像できると思いますが、実は
- 子どもを怒鳴ったり叩いたりする
- 無視する
- 放っておく
などの行為も原因になることがあります。
もっと言えば、
- 子守がわりにスマホやタブレットをあてがう
- 授乳中に親がSNSを見たりする
行為も含まれます。
直接子どもに手をあげているわけではないのになぜ脳が傷つくのでしょう。
生まれた時はわずか300gしかない人間の脳は、ゆっくりと成長し、時間をかけて生きるすべを習得していきます。その発達過程において、脳には外部からの影響を受けやすい、非常に大切な時期があります。胎児期、乳幼児期、思春期です。こうした人生の初期段階に、親や養育者といった身近な存在から適切なケアと愛情を受けることが、脳の健全な発達には必要不可欠です。
2017年「子どもの脳を傷つける親たち」友田明美著
ついつい身体的な成長だけに目を向けがちですが、子どもの小さな体の中ではあらゆる臓器が成長しています。言われてみればそうだということはなんとなく想像できますよね。
しかし、この時期に過度のストレスを感じると、子どものデリケート脳は、その苦しみになんとか適応しようとして、自ら変形してしまうのです。生き延びるための防衛反応だともいえます。これは悲しく、そして驚くべき事実です。
2017年「子どもの脳を傷つける親たち」友田明美著
その結果、脳の機能にも影響がおよび、子どもの正常な発達が損なわれ、生涯にわたって影響をおよぼしていきます。
子どもの感じるストレスには、加害の意図の有無は関係ありません。スマホやタブレットの使用自体は悪くはありませんが、親と子の重要なコミュニケーションの時間がなくなってしまうという意味でストレスを与えてしまいます。子どもに直接手をあげていなくても、子どもの脳を傷つけてしまう。そしてそれが原因で、学習意欲の低下や非行、うつや統合失調症などの病を引き起こすことも明らかになっています。
では、傷付いてしまった脳は回復することはないのでしょうか。
いえ、そうとは限りません。最近の脳科学研究では、「脳の傷は癒される」という事実が多く報告されています。
2017年「子どもの脳を傷つける親たち」友田明美著
傷ついた脳に対しては、薬物療法と心理療法が施されます。薬物治療に関しては専門の先生の力を借りることが必要ですが、私たち一人の親にもできることがあります。それは精神的な働きかけです。
- 子どもを一人の人間として大切に扱うこと
- 何があっても味方だと伝えること
- ありのままを受け入れること
- 勇気づけること
- スキンシップを積極的に行うこと
そして、その精神的な働きかけはどれもAP(アクティブペアレティング)的な子どもとの関わり方そのものです。
気付かないうちに子どもの脳を傷つけないように、もしかしたらもう傷ついているかもしれない子どもの脳を癒すために、ペアレントトレーニング(親教育)は必要です。子どもたちをサポートし、生きていくための力を育むために、大人が責任を持って行動しなければならない、学び続けなければならないのです。
脳を傷つける不適切な関わりを<マルトリートメント>と言います。
マルトリートメントについて詳しく知りたい方は、福井大学子どものこころ発達研究センター教授である友田明美先生の著作をぜひ読んでみてください。
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